アラビア語はじめの一歩 ニューエクスプレス+アラビア語フスハー | 外国語の筋肉的レビュー


ニューエクスプレスプラス アラビア語

 

 


選択肢が限られているアラビア語教材の中で、ニューエクスプレスシリーズはアラビア語の貴重な文法・単語・音声教材です。

アラビア語には話し言葉アーンミーヤと、書き言葉のフスハーがあります。

本教材はフスハーアラビア語になります。

同シリーズに「エジプトアラビア語」もありますので間違えないよう注意して下さい。

+(プラス)のない無印との違いは以下のとおりです。

10課ごとに10問の理解度確認テストが追加
簡単なスピーチ・メッセージの表現を追加
長文読解用の文章を追加
音声アプリ対応

B5サイズで厚さも1cm以下

個人的な好みですが、物理的なこのサイズ感もポイントです。


取り扱い科目

・文字と発音
・挨拶の表現
・名詞述語文
・人称代名詞
・疑問文
・単語の性
・定冠詞・不定冠詞
・人称の格
・代名詞
・形容詞
・ニスバ形容詞
・動詞完了形・不完了形
・所有表現
・前置詞
・複数形
・副詞
・存在表現
・要求法
・理由の表現
・派生形動詞
・接続法
・比較級・最上級
・依頼の表現
・イダーファ表現
・義務の表現
・電話の表現
・否定文
・カーナ動詞
・命令形
・数詞


筋肉レーティング


☆筋肉レーティングは拙著「外国語の筋肉」の基本筋肉に沿って評価しています。

 


単語筋★★★★☆

日常会話形式の例文が豊富で、登場する単語数も多いです。

それに加え「単語力アップ」という特集ページでは例文に使用される単語以外も多く掲載されています。

そのため高い語彙力アップも期待できるでしょう。



文法筋★★★☆☆

全20課という構成で、基本的な文法項目は押さえてあります。

そのため入門・初級の文法書としては十分有効なトレーニングが可能です。

見開き2ページで、左ページがアラビア語、右ページが日本語とコンパクトにまとまったレイアウトで使い勝手がよいです。

ただやはりとっつきやすさを重視したためか、割愛されてる項目も多くあります。

特に動詞の変化に関して、アラビア語には10パターンの変化があると言われていますが、本教材はその全体像には触れていません。

ニューエクスプレスで学べる範囲はあくまで入り口。

入門・初級の文法教材と割り切って使い、中級者向けの「アラビア語とことん表現トレーニング」を併用すると良いでしょう。



聞耳筋★★★☆☆

CDのアラビア語音声はゆっくり&はっきりで聞き取りやすいです。

ただそれは裏を返せば本格的な音声教材として不足する部分もあるということです。

ネイティブの話すアラビア語音声とは別物と考え、アルファベットの音の確認用など、初級教材と割り切って使用するのがよいでしょう。


発音筋★★★☆☆

CDのアラビア語音声はナチュラルスピードよりもゆっくりめなため、口慣らしに適しています。

ただし、本格的な発音練習には別途中級以上の音声教材を用意しましょう。


反射筋★★★☆☆

CDの音声がナチュラルスピードと較べてかなり聞き取りやすいので、反応スピードの到達可能レベルも初級止まりです。

日本語訳の音声はないので、日本語からアラビア語を組み立てる反射発筋のトレーニングは期待できません。


山羊山ならこう使う

国連公用語の一つでもあり、中東を中心にイスラム教圏で広く使用されるアラビア語

話者人口は2億人とも3億人とも言われていますが、日本ではまだまだマイナー言語の域を出ていません。

そのため日本語で解説されたアラビア語学習教材は選択肢が非常に限られています。

また、私達にとって左から右への文字の並びが標準なのに対し、アラビア語は右から左に文字が並びます。

そのためアラビア文字は非常に読み難く感じます。

馴染みのない暗号のようなアラビア文字が右から左に羅列され、そしていざ学習開始となっても教材は限られている。

日本人にとって、アラビア語学習は間違いなく最高難易度の言語のひとつと言えるでしょう。


僕は通常、アルファベット単体の学習は数時間で切り上げて、文法の学習に入ります。

しかしながら、アラビア語のアルファベットであるアラビア文字は、通常よりも時間をとって学習を行うことをお勧めます。

・見慣れない文字の形
・右から左への文字の並び
・日本語や英語に無い発音
・文頭、文中、文末で変わる文字の形

などなど学習者を惑わせる障害が多々あるからです。

ニューエクスプレスにも文字と発音の課目はありますが、もう少し詳細な解説やドリルが必要な場合は別途教材を用意するのがよいでしょう。

 

アラビア文字練習プリント など

 



ニューエクスプレスの解説文は左から右へ読む日本と、右から左へ読むアラビア語が混ざって表記されるので読み難く、最初は慣れが必要です。

文法に関しては、多くの人が見開き左ページのアラビア語を読み、それを日本語に訳して理解する学習方式をとると思います。

それは外国語の筋肉的に言うと「受」のトレーニングになります。

しかしながら、「受」より「発」を重視するのが山羊山流なので、右ページの日本語を見てアラビア語の組み立てを行うという学習法をオススメします。

詳しくは拙著「外国語の筋肉」に譲りますが、「発」方式でトレーニングした方がよりしっかりとした単語筋・文法筋が身につくからです。

文法筋レーティングでも触れましたが、しっかり文法を理解しようと思ったら本教材では解説が省略されている部分もあります。

「習った内容と違うな」「こんなん習ってないぞ」といった箇所が出てきたら、アラビア語表現とことんトレーニングを併用して学習に取り組むのがよいでしょう。

 



選択肢の少ないアラビア語学習者にとって、ニューエクスプレスは優れた入門・初級教材です。

この教材をメインに2~3周繰り返して学習を行い、アラビア語の組み立てがスムーズになってきたらサブとして使っていた「アラビア語表現とことんトレーニング」に本格的に取り組んでいくのがよいでしょう。


ニューエクスプレスプラス アラビア語